研究概要 |
真確生物のゲノムDNAは、ヌクレオソームを基本単位としたクロマチンとよばれる高次構造体として核内に収納されている。ヌクレオソームの構成因子であるヒストンには、バリアントが存在することが知られている。このうち、H3バリアントは、生体内でそれぞれ異なる染色体領域に局在し、特異的な機能を果たしていると考えられている。しかし、H3バリアントのクロマチン形成における詳細な役割は未だ明らかにされていない。そこで、H3バリアントの生体内における機能発現は、それぞれ特異的な相互作用因子群によってなされていると考え、本年、申請者は、ヒト由来のH3バリアント/H4複合体をリコンビナントタンパク質として精製し、HeLa細胞抽出液を用いて、新規ヒストン結合因子およびH3バリアント相互作用因子群のプロテオーム解析を行った。プロテオーム解析の結果、H3バリアントと相互作用する因子の候補が、3404種類得られた。さらに、相互作用因子の候補から、NASP(Nuclear Autoantigenic Sperm Protein)を同定した。NASPは、これまでにヒストンと結合することが報告されているものの、その詳細な機能は明らかにされていなかった。そこで、申請者は、すべての体細胞での発現が確認されているsomatic NASP(sNASP)をリコンビナントタンパク質として発現させ、高純度に精製する系を確立した。精製タンパク質を用いた生化学的解析から、sNASPはすべてのH3バリアントと相互作用すること、そしてsNASPがヌクレオソームの形成を促進するヒストンシャペロン活性を有すること、さらに、その活性は,H3バリアントによって大きく異なることを明らかにした。また、欠失変異体を用いた生化学的解析から、sNASPのヒストンシャペロン活性に重要なドメインを同定した。これらの成果は、申請者が第一著者としてJournal of Biological Chemistryに受理され、4月に掲載される予定である(in press,2010)。
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