研究課題
本研究の目的は、ヌクレオソームの構成因子であるヒストンH3のバリアントやそれらと相互作用する因子群を、生化学的および構造生物学的手法を用いて解析し、H3バリアントおよび相互作用因子群によるクロマチン構造形成のメカニズムを明らかにすることである。申請者はこれまでに、H3バリアント相互作用因子群を同定する為に、プロテオーム解析を行い、H3バリアント相互作用因子としてNASP(Nuclear Autoantigenic Sperm Protein)を同定した。NASPは、これまでの報告から細胞周期の移行やDNA複製に重要な因子であると考えられている。そこで、NASPの詳細な機能を解析する為に、申請者はすべての体細胞での発現が確認されているアイソフォームであるsomatic NASP (sNASP)をリコンビナントタンパク質として高純度に精製を行い、生化学的解析を行った。その結果、sNASPはコアヒストンに直接結合し、ヌクレオソームの形成を促進する活性を有することが明らかになった。さらに、これらの活性はH3バリアントによって大きく異なることが明らかになった。これらを含めた成果は、申請者が第一著者としてJournal of Biological Chemistryに掲載された。また、精巣での高発現が確認されているものの、機能未知なH3バリアントであるH3Tを含むヌクレオソームを、試験管内で再構成した。再構成したH3Tヌクレオソームを用いた生化学的解析の結果、H3Tヌクレオソームは通常のヌクレオソームに比べて著しく不安定であることがわかった。さらに、H3Tを含むヌクレオソームの結晶化を行い、得られた結晶からX線結晶構造解析を行うことに成功した。これらの成果は、申請者が共著者としてProceedings of the National Academy of Sciencesに掲載された。
すべて 2011 2010 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (13件) 備考 (1件)
Acta Crystallographica.Section D, Biological Cry stallography
巻: 67(pt2) ページ: 112-118
Journal of Biological Chemistry
巻: 285(16) ページ: 11913-11921
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 107(23) ページ: 10454-10459
http://www.eb.waseda.ac.jp/kurumizaka/