マウス癌組織における小胞体ストレスマーカーの検討 培養細胞を用いて得られる結果をin vivoで評価するため、各種癌細胞群をヌードマウス皮下に移植して形成される癌組織と正常組織を比較して、各種抗体を用いて病理組織学的検討を行おうとしている。 小胞体ストレスシグナルをモニターする手段として、小胞体受容体IREI・PERKの活性化抗体、その下流で発現誘導される小胞体シャペロンBiPや転写因子CHOPの抗体、小胞体ストレス特異的に起こるmRNAスプライシングを検出するプローブ、ERADの機能低下による小胞体不良タンパク質の蓄積を検出する蛍光プローブ、アポトーシス実行因子ASK1-JNK経路の活性化抗体の開発に成功している。一方評価対象側としては、20種類以上の口腔扁平上皮癌、唾液腺癌、骨髄腫などの培養細胞を有している。上記の抗体・検出プローブを用いて、これらの細胞群および正常細胞が、低酸素・低栄養状態に対してどの様な小胞体ストレスシグナルを誘導するかを詳細に検討している段階であり、この行程が終わり次第、ヌードマウスへの打ち込みを行い、実際の病理組織学的検討を行う。 発癌・口腔癌転移と小胞体ストレス誘導性アポトーシスシグナルに関する検討 ASK1を介したアポトーシスシグナルの抑制は癌細胞増殖のメカニズムの一つと予想されるが、癌細胞転移・浸潤の観点からは、宿主側ではむしろアポトーシスがポジティブに作用していることも予想される。そこで、我々が既に作製・解析しているASK1ノックアウトマウスに、扁平上皮癌、腺癌を移植する実験により、口腔癌転移・浸潤への影響を評価する。その準備段階として、小胞体膜上遺伝子による細胞死シグナル伝達様式に関する検討を継続しており、詳細なシグナル伝達様式をさらに深く検討しているところである。
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