腸管上皮細胞のタイトジャンクション(TJ)バリア機能は、TNF-αやIFN-γなどの炎症性サイトカインにより低下する。従って、腸管の炎症性サイトカイン発現を抑制することは、腸管バリア機能保護に非常に有効である。我々は新規に、炎症性サイトカインIL-17がTNF-αによるバリア機能低下作用を相乗的に亢進することを見出した。炎症性腸疾患におけるIL-17などの炎症性サイトカイン産生亢進の機序を解析した結果、腸炎モデルマウスであるDSS大腸炎マウスの腸管上皮細胞(IEC)が、T細胞からのIL-17、IFN-γ産生を誘導することが明らかとなった。大腸炎マウスのIECはCD4+T細胞からのIL-17、IFN-γ産生が誘導されることから、Th17/Th1の分化が誘導されることが示唆された。またこの作用は、IECからの分泌物によるものではなく、IEC/CD4+T細胞の直接接触が必須であった。腸炎マウスのIECの遺伝子発現解析を行なったところ、CD80などのT細胞共刺激分子の発現量が亢進していた。さらに、阻害抗体を用いた解析により、CD80/CD86-CD28、CD40-CD40L結合による共刺激シグナルがTh17/Th1分化誘導に寄与していることが示された。Bifidobacterium longumを大腸炎マウスに経日投与したところ、IECのT細胞共刺激分子発現が抑制された。これにより、大腸炎マウスIECによるTh17/Th1誘導能が減弱した。B.longumは、TNF-αまたはIFN-γで刺激したヒト腸管上皮様HT29細胞のT細胞共刺激分子発現を抑制した。このことから、B.longumはIECに直接作用してT細胞共刺激分子の発現を制御することが示唆された。乳酸菌・ビフィズス菌は、IECを介してIL-17、FN-γ産生を抑制し、腸管バリア機能低下を抑制する可能性が見出された。
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