分子配列制御を用いた新規プロトン伝導性配位高分子の創製を行うにあたり、酸性分子であるブタンジホスホン酸およびプロパンジホスホン酸の合成を行った。同定はNMRを用いて行った。それらの酸性分子をシュウ酸、および金属塩と反応させて水熱合成法により配位高分子の合成を行った。現在のところ、目的としている二次元配位高分子の生成は確認されていない。これは酸性分子のサイズが適切でなく、結晶のパッキングに適していないためであると現在考えており、今後はアルキル鎖を変えて酸性分子のサイズを制御することによって引き続き目的の新規配位高分子の合成を目指していく。また、アジピン酸を用いた配位高分子においてカチオンであるアンモニウムをカリウムに置換した配位高分子の合成に成功した。また、単結晶X線構造解析によりこの結晶構造を決定した。その結果、カリウム置換体の構造はアンモニウム体と同一の構造であることが明らかとなった。プロトン伝導性を交流インピーダンス測定により評価したところカリウム体では同湿度において2桁以上低い伝導度を示した。結晶構造から、この伝導度の低下はアンモニウムからカリウムに置換されたことによって、水素結合ネットワークが部分的に寸断されたためであると考えられた。これは、水素結合ネットワークを限定的に制御してプロトン伝導性に影響を与えることができた極めて稀な例であり、今後も解析を進め、詳細を明らかにしていく予定である。論文発表では、アジピン酸を用いた配位高分子のプロトン伝導性に関しての論文を執筆し、Journals of American Chemical Societyへ投稿・受理・掲載された。また、学会発表では、Japan-Canada Coordination Space Symposium 2009、分子科学討論会、錯体化学討論会、日本化学会等の学会へ参加し、積極的に成果発表を行った。
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