研究概要 |
酸性基を有するプロトン伝導性配位高分子(H3N(CH2)4NH3)[Zn2(ox)3]を用いて、非水系伝導媒体として、水以外にアルコール、その他の吸着質に対する吸着特性の評価を行い、窒素、水素、メタノール、アセトニトリル、アセトアルデヒド、エタノール、アセトン、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールの吸着等温線を測定した結果、水酸基を有するメタノール、エタノールのみを選択的に吸着することを見出し、世界で初めて完全な水酸基認識能を有する物質を見出すことに成功した。また、この結果について、論文を執筆・投稿し、Journals of the American Chemical Societyへ受理・掲載された。アジピン酸を導入した配位高分子(NH4)2(adp)[Zn2(ox)3]・3H20およびアンモニウムイオンを非プロトン性のカリウムに置換したK2(adp)[Zn2(ox)3]3H20のプロトンダイナミクスを明らかにするために、英国の中性子施設ISISにおいて中性子準弾性散乱実験を行った。測定の結果、NH4体では3つの異なる緩和を、K体では2つの異なる緩和を観測することに成功し、それらが回転運動であることを明らかにした。また、それによりこの配位高分子中では主にグロータス機構によってプロトンが伝播していることを明らかにした。さらに、それらの温度変化を測定することにより、配位高分子中では、細孔中のアンモニウムイオンの回転運動が、他の伝導媒体の回転運動を誘起していることがわかり、最も活性化エネルギーの低いアンモニウムイオンの回転運動が、系内のプロトンの伝播を支配していることを明らかにした。また、系内の親水性を制御可能である配位高分子{NR3(etac)}[MCr(ox)3]・nH20 (R=Me, Et, Bu; M=Fe, Mn)において、最も親水性が高い{NMe3(etac)}[FeCr(ox)3]・nH20が低加湿下においても高プロトン伝導性を発現することを見出すことに成功した。この結果について、論文を執筆・投稿し、Journals of the American Chemical Societyへ受理された。また、学会発表では分子科学討論会、錯体化学討論会、日本化学会等の学会へ参加し、積極的に成果発表を行った。
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