今年度は、新たに得た試料を用いて西部太平洋亜熱帯域定点におけるナノモルレベルの栄養塩の日~月の時間スケールでの変動様態の解析を行い、併せてこれまでの観測結果の解析を進めた。年度始めの航海において事故が発生したため、5月~6月の定点観測航海には参加できなかったが、同航海の乗船研究者によるサンプル採取により、栄養塩変動に関する研究が進展した。また、栄養塩分析だけでなく植物プランクトンの群集解析について色素分析を中心におこなった。高速液体クロマトグラフィーで分析、定量した色素を行列プログラム(CHEMTAX)で300サンプル以上計算し、植物プランクトン群集組成を評価した。その結果、観測海域では原核緑藻、藍藻が優占していることが示唆された。また、解析による現存量は他の分析方法による群集解析と正の相関が認められ、植物プランクトン群集組成を正しく評価できていると考えられる。今後、植物プランクトン群集と栄養塩の変動を様々な空間スケールで解析していく必要がある。 また、成果の公表は、西部北太平洋亜熱帯域における降雨による硝酸塩供給に関して得た新知見を、米国地球物理学連合(AGU)の機関誌Journal of Geophysical Researchに投稿し、受理目前の段階に至っている。また、これまでの観測結果を整理して太平洋熱帯・亜熱帯海域表層におけるナノモルレベルのアンモニウム塩の広域分布と、西部太平洋亜熱帯表層における栄養塩ダイナミクスの2件を日本海洋学会において口頭発表し、現在それらの投稿原稿を作成している。
|