西部北太平洋亜熱帯域における降雨による硝酸塩供給に関して得た知見を、米国地球物理学連合(AGU)の機関誌Journal of Geophysical Researchに受理された。さらに、2008年度におこなった西部太平洋暖水プールでの三週間にわたる定点観測の結果について解析を進めた。その結果、まず、大きな場の変動としてリン酸塩濃度が低下し、また基礎生産速度が増加しており、これが亜熱帯海域からの水平移流による供給によって生じることが示唆された。さらに、亜表層で潮汐による硝酸塩供給があり、それが間欠的に表層まで影響を及ぼすこと、光制限に伴う一時的な基礎生産の低下により、栄養塩の消費と再生のバランスが崩れ、水中のアンモニウム塩濃度が増加することが明らかとなった。この結果と解釈について、東京大学大気海洋研究所共同利用集会ならびに日本海洋学会春季大会で発表した。さらに、2012年7月に開かれる2012 Association Society of Limnology & Oceanography Aquatic SciencesMeetingで発表する予定である。また、これまでの研究結果を総合的に解析して、日本近海の西部北太平洋では下層からのリン酸塩供給と窒素固定、大気降下物による窒素供給の季節的な変動により、リン酸塩枯渇域が消長すること、太平洋熱帯亜熱帯海域が少なくとも5つの海域に区分されること、ナノモルレベルの栄養塩濃度の増加に伴い、植物プランクトンが増加していること、さらにその増加する群集は供給される栄養塩の種類によって異なることを明らかにし、博士論文にまとめた。 また、2011年12月から翌年1月まで研究航海に参加し、西部北太平洋、東部北太平洋、東部南太平洋の3海域の栄養塩の空間分布を明らかにした。その結果、北太平洋、南太平洋いずれも東西にリン酸塩濃度勾配があること、西部太平洋ではリン酸塩枯渇域が東西方向に安定して広がっているわけではないこと、ハワイ周辺海域では硝酸塩がナノモルレベルで残存していることが明らかになった。
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