ガンマ線観測衛星Fermi(旧称GLAST)が、2008年7月に打ち上げられ、さまざまな新成果が報告されている。私が研究対象としている銀河団からのガンマ線放射は、非常に微弱ながらFermiによって検出が可能かもしれないと予想されていたが、現時点では有意に検出されていない。そこで現在、私は予定どおりガンマ線放射の上限値からの議論を進めている。フラックス上限値はどの銀河団でも、Fermiの感度で決まる10^<-9>-10^<-8>[photon/cm2/s](100MeV-300GeV)程度と求められている。銀河団中に閉じ込められている高エネルギー陽子のエネルギー密度は、熱的エネルギーの5%以下と計算される見込みであり、銀河団の構造を支えている非熱的な圧力(高エネルギー粒子による圧力)は、多くの報論研究者が予想しているものより、幾分か小さくなることが明らかになってきた。また、銀河団からの放射モデルを議論する場合は、より広いエネルギー帯域におけるデータが必要となる。そこで私が検出器チームに属しているすざく衛星のX線データの解析も力をいれて行った。具体的には、修士のころから進めていたPerseus銀河団の温度構造の解析結果をまとめた論文を発表したことと、昨年私がPIとして観測した近傍銀河団A3627の解析を進め、A3627銀河団で現在小規模な銀河団衝突が起こっている可能性を示したことである。これらのX線による解析結果は、Fermi衛星で得られたガンマ線フラックス上限値と合わせて議論していく予定である。
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