軟X線顕微鏡は、超高分解能と深い焦点深度を併せ持ち、さらにはX線の吸収差によって元素特定を可能にすることから、様々な分野から開発が期待されている。既存の機器では困難な超高分解能の撮像を可能にするため、本研究では極微細加工に利用される高分解能レジストを利用したコンタクト露光イメージングを検討している。レジスト材の上に試料を載せて露光し、原子間力顕微鏡(AFM)等でレジスト上に記録された凹凸を観察する手法で、ナノオーダーの元素マッピングを可能にしようというものである。特に「水の窓領域」と呼ばれている軟X線領域(250~500 eV)では、水のX線吸収率が炭素・窒素の吸収率に比べて一桁小さい。この特徴を活かし、脱水の必要なく生体細胞や高分子構造の元素マッピングが可能な軟X線顕微鏡の開発を実現することが最終的な目標である。研究2年目に当たる平成22年度は、「レジストを利用した超高分解能撮像試験」及び「高感度レジスト開発に向けた放射線化学反応に関する研究」を行った。文部科学省の「先端研究施設共用イノベーション創出事業ナノテクノロジーネットワークプログラム」(ナノネット)の支援を受け、九州シンクロトロン光研究センターにおいて各種ナノ粒子を標準試料とした撮像試験に成功した。結果については近く論文発表を行う予定である。また、ナノネットの支援を受け、大阪大学産業科学研究所において電子線や集束イオンビームを照射した際のレジストの反応について解析を行った。レジストを用いた撮像プロセスの最適化や高感度化を目指す上で放射線照射効果の解明は不可欠であり、ナノ構造体分析という本研究の最終目的のための基礎研究としても重要である。本研究の成果は論文や国際学会において社会に還元し、評価を得た。 (論文2本、投稿中1本、学会発表3件、受賞2件)
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