レジストを用いた軟X線顕微鏡の開発を実現するため、「(1)レジストの放射線化学反応の解明と高感度レジストの選定」及び「(2)撮像試験」を行った。 (1)これまでの研究で有力候補となったZEPレジスト(日本ゼオン)について電子線照射後の生成物分析を行った。また、文部科学省の「物質・デバイス領域共同研究拠点共同研究」の支援を受けて大阪大学産業科学研究所のL-band Linacにてパルスラジオリシス実験を行い、塩素含有レジストが複数の経路で高効率に主鎖切断反応を起こすことが分かった。さらに、大型放射光施設SPring8の分光単色X線を用い、各種レジストの感度を測定した。感度は照射波長に依存し大きく変化したが、感度に相当する吸収線量は照射波長に依らずほぼ一定であった。さらに、この値は電子線照射時の吸収線量ともおおよそ一致した。この結果から、レジストの吸収係数とある一つの波長における感度が与えられれば、どの波長での感度も理論的に予測できる。実際に予測感度と実測感度はほぼ等しい値を示した。この感度予測法は、今後の高感度レジストの選択や新規開発に有益な情報を与えるものである。 (2)ZEPレジストを用いて、SPring8の分光単色X線で撮像試験を行った。窒化ケイ素ナノ粒子の撮像に成功し、粒子が凝集している様子が100nm以下の高分解能でレジスト上に記録された。さらに、窒素のK殻吸収端前後での像を比較したところ、窒素の吸収が大きい波長のX線を用いた場合、より高コントラストな撮像ができていることが分かった。この結果は近く論文等で発表する予定である。今後撮像条件の最適化などを行い、実用化に向けた検討を引き続き行っていきたい。 以上の結果より、レジストの放射線化学反応を利用した高分解能X線撮像と元素マッピングの原理実証に成功し、本研究の目標は達成されたと考えている。本研究の成果は論文や国際学会において社会に還元し、評価を得た。
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