本研究は、都市化が進む中都市景観を保存する市民活動をめぐって、市民活動と政策過程との関係を分析し、変容する国家・社会関係を明らかにしたいものである。1990年代から、中国地方政府による都市中心部の再開発が、歴史の町並みを取り壊したり、住民を強制的に移住させたりする市民権利の侵犯であると認められてきた。都市中心部・歴史町並みの再開発に反対する市民活動を研究対象とし、市民活動が如何に政策過程を影響することを研究したい。 研究計画によって、過去の一年間、基本的にフィールドワーク及び参与観察法などの研究方法で実証的に行った。研究方法について、政治学、社会学、文化人類学の知識と方法も活用し、フィールド調査に通して直接資料をとった。北京や南京などの歴史都市でフィールドワークをして、インタビュー、アンケート及び参与観察などの研究方法を通じていくつかの事例研究をした。 現地調査と資料分析を通じて、研究テーマに大きい進展があった。以前の中国研究にはあまり研究しなかった問題が、この研究において初めて触れた。インタビュー、アンケートを通して中国における町並み保存運動がいったいどのような方式でやっているのかを解明し、日本や台湾と比較して、東アジアにおける社会運動の類似点と相違点を解明した。中国なり日本なり、儒教文化の影響が深い社会において、社会運動という「集団的行動」にも東アジアの特徴があると強調した。 主な研究成果として、博士論文「現代中国における社会運動の台頭」を2010年9月完成し、2011年1月早稲田大学で博士号をとった。
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