本研究の目的は、「有機化学における精密高分子合成のように樹状ポリシロキサンを精密に合成し、得られた樹状シロキサンをビルディングブロックとして新規シリカ系ナノ材料の合成を行う」ことである。本年度は3件の異なる研究を平行して進めた。 i)スターポリマーの内部架橋による球状シロキサンの合成 本テーマではシロキサンのスターポリマーを合成し、その内部架橋により、精密な球状シロキサンを合成することを目指している。特に5nm-10nmの球状シロキサンを精密に合成する上で本手法は有効と期待される。本年はスターポリマーの合成に向け、Ulrich Wiesner教授(Cornell University)の下でアニオンリビング重合を3カ月学び、合成技術の習得ならびに合成スキームを確立するに至った。 ii)アルコキシシロキサンオリゴマー合成に展開可能な新しいシロキサン結合形成反応の開拓 本テーマではアルコキシシリル基を保護しつつシロキサン結合を形成する反応を開拓することを目標としている。従来シロキサンを形成する上でシラノール基を経由する必要があったが、嵩高いアルコキシシランとクロロアルコキシシランをルイス酸触媒下で混合することで、シラノール基を経ずに種々のアルコキシシロキサンオリゴマーを選択的に合成することに成功した。本研究はAngew.Chem.Int.Ed.に論文が掲載され、論文誌表紙にも採択された。 iii)ラダーシロキサンポリマーの合成 本テーマではポリシロキサンの精密合成の一環として、鎖状ケイ酸塩を出発物質としてシリル化によりラダーシロキサンポリマーを精緻に作ることを目標としている。様々なシリル化剤でケイ酸塩の頂点をキャッピングすることで、構造が明確なラダーシロキサンポリマーの合成に成功した。また、シリル基の官能基をmacroinitiatorとして新規ハイブリッドポリマーを合成できる可能性が見出せた。
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