研究概要 |
本研究課題の通り,本研究は高効率高選択的なアルカンメタセシスを実現する新規触媒システムの開発を目指している.当初の計画では錯体触媒の利用と開発を検討していた.しかしながら錯体触媒の利用には反応系が液相であることが必要条件となり,気体である低級アルカンに対しての適応が困難であるという側面がある.フィッシャー・トロプシュ合成により生成する低級アルカンをアルカンメタセシスによりガソリン留分に相当する高級アルカンへと骨格伸長する反応系は工業的に非常に有意義であるため,気相反応系の構築が強く望まれる.そこで採用第一年目では,気相における低級アルカンを用いた反応系の構築を目指した.本研究ではアルカン脱水素触媒としてPtSn/Al2O3,オレフィンメタセシス触媒としてRe207/Al2O3を用いこれらの触媒層を閉鎖循環系内で連結させ,反応雰囲気が絶えず両触媒層を交互に通過する系を設計した.従来の流通系では中間体オレフィンの濃度を確保するために673K,62atmという高温高圧が必要であったが,閉鎖循環系の適用により0.13atmという低圧下において反応を進行させることに成功した.反応条件を検討した結果,脱水素温度を573K,メタセシス温度を373Kにおいて,プロパン転化率16%,アルカン選択性95%を達成した(反応時間120h).これは閉鎖系におけるプロパンメタセシスのチャンピオンデータ18%(W-H/Al2O3 : E.L.Roux et.al., Angew.Chem.Int.Ed., 2005, 44, 6755.)に匹敵するものである.また今後,反応条件や触媒の最適化を行うことでさらなる活性の向上も期待できる.
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