研究課題
H23年度は、強磁性体電極から半導体二次元電子ガス中へのスピン注入と電子スピンの電気的制御によるスピン回路の実証実験を計画していた。しかしながら、H23年3月の東日本大震災の影響によって、研究代表者が所属する研究室の金属薄膜成膜装置が使用不可能となってしまったため、一部計画を変更して研究を進めた。具体的にはH21、H22年度で実験的に明らかにした、準一次元チャネル中における電子スピンの緩和抑制に関する理論的研究、および電子スピンの運動する経路にのみ依存する、電子スピンの幾何学的位相の検出実験を行った。準一次元チャネル中における電子スピンの理論解析では、モンテカルロ法に基づくシミュレーションから、チャネルの低次元化による電子スピンの安定化、スピン緩和メカニズムの解明につながる重要な知見を得ることができた。また、準一次元のチャネルを用いた、スピン自由度によってCMOSと同様の出力を得ることができる、新規スピントロニクスデバイス(スピン相補インバータ)の提案も行った。一方、電子スピンの幾何学的位相の観測実験には、InGaAs半導体メゾスコピックリング配列を用い、電子スピンの運動経路を制御することによって電子スピンの位相情報を自由に変更することが可能であることを示した。H23年度に得られた研究結果は、いずれも半導体チャネル中における電子スピンの制御効率・制度のさらなる向上につながる、スピントロニクスデバイスを実現するうえで極めて重要な技術であるといえる。また、スピン回路は低次元系において実現すべきであるため、H23年度の研究成果が直接的にスピン回路の実現につながるものと期待される。
2: おおむね順調に進展している
H23年3月の東日本大震災により、研究代表者画素属する研究室の金属薄膜成膜装置が使用不可能となったため。スピン回路の実現には電子スピン注入用の強磁性体電極が必要。
H23年度が本研究課題の最終年度である。
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