研究概要 |
直鎖状ポリフェニレンビニレン(linPPV)と樹状PPV(hypPPV)のフィルムをガラス基板上に調製し、この薄膜に12残基のランダムペプチド提示ファージライブラリー(2.7×10^9種類)を作用させた。結合の弱いファージは洗い流し、結合能の強いファージを濃縮した。この一連の操作を5回繰り返し(バイオパニング)、得られたファージをクローン化してDNA配列解析を行うことでランダム領域に提示されたアミノ酸配列を同定した。linPPV,hypPPVに対して、それぞれLin01ペプチド(ELWSIDTSAHRK)、Hyp01ペプチド(HTDWRLGTWHHS)を同定した。これらの結合能・特異性をSPRによって定量的に評価した。その結果Lin01,Hyp01の標的に対する結合定数はそれぞれ7.7×10^4(M_<-1>)と7.7×10^5(M_<-1>)であった。またHyp01ペプチドは標的であるhypPPVに対してlinPPVよりも15倍大きな結合定数を与えた。同様にLin01ペプチドは標的であるlinPPVに対してhypPPVよりも2.1倍大きな結合定数を与えた。本結果は、ペプチドが樹状構造または直鎖構造という厳密な構造変化を認識できるということを示していて、とても興味深い。 次に、特異性・結合能の高かったHyp01ペプチドについて、Alaスキャニング実験を行った。その結果、相互作用に重要なアミノ酸の順列は次の通りであった。Trp9>Trp4>Arg5>Leu6>Gly7>His10>His1>Thr8>Thr2>Asp3>His11>Ser12。Hyp01ペプチドは2つのTrpを含んでいるが、そのうちの1つをAlaに置換しただけで、hypPPVに対する特異性は失われた。つまり2つのTrpが共同的に作用することによってhypPPVに対する特異性が発現していることがわかった。
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