四足動物の副腎皮質ホルモン系は、グルココルチコイド系とミネラルコルチコイド系に分化している。最近、ミネラルコルチコイド系は存在しないとされていた真骨魚類でも、ミネラルコルチコイド受容体(MR)分子とその内因性リガンド候補の11-デオキシコルチコステロン(DOC)が伺定され注目を浴びている。その一方、定説によると、グルココルチコイドのコルチゾルが魚類では糖代謝に加えて電解質代謝にも重要だとされている。このように、魚類の"ミネラルコルチゴイド系"の研究は緒に付いたばかりである。 私はこれまでに、このDOC-MRではなく、コルチゾル-グルココルチコイド受容体が、浸透圧調節器官の機能分化に重要であることを、ティラピアやトビハゼ、メダカなど幅広い塩分濃度に順応できる広塩性魚類を用いて確認している。しかし、魚類の"ミネラルコルチコイド系"の役割は、依然全く不明である。このような新しい系の機能解明には遺伝子破壊/制御が有効である。そこで、MR遺伝子を人為的に破壊したメダカを作製しミネラルコルチコイド系の役割を解明するため、MR遺伝子上に変異を起こしたミュータントメダカをTargeting Induced Local Lesions In Genomes (TILLING)法により同定することを試みた。 MR遺伝子の変異スクリーニング結果では、リガンド結合領域をコードする第4エクソン上に3種のアミノ酸置換を生じるミスセンス変異(754番目のロイシン(L)がプロリン(P)、767番目のスレオニン(T)がアラニン(A)、770番目のアスパラギン酸(D)がグルタミン酸(E))が同定された。これらの変異は、いずれも魚類間における保存性が極めて高い領域で生じていた。現在、同定されたこれら受容体の転写活性化能をレポーター遺伝子アッセイ法により解析している。
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