申請者は、個体および細胞内において標的蛋白質の選択的検出を可能にする手法の開発を目的とし研究を行った。その結果、標的蛋白質のみを蛍光オフオン型で選択的に検出することのできる分子プローブの開発に成功した。 標的蛋白質の非存在下では蛍光オフ状態であるが、その存在下では蛍光オン状態になる「蛍光オフオン型プローブ」は、バックグラウンドシグナルを軽減でき、高感度かつ高分解能の蛋白質検出を可能にするものとして大変魅力的である。しかし、そのような蛍光オフオン型プローブの設計戦略は現在非常に限られているため、新しい蛍光スイッチングの原理が求められている。 これまでに所属研究室では、プローブの自己会合/解離機構に基づいた^<19>F-NMRシグナルオフオン型蛋白質検出用プローブの開発に成功している。そこで申請者は、"プローブの自己会合/解離特性"に着目し、これを作動原理とした新規の蛍光オフオン型プローブの開発を試みた。会合することで消光するような蛍光色素を用いれば、自己会合特性を持つ蛋白質リガンド-蛍光色素コンジュゲートは蛋白質選択的な蛍光オフオン型プローブとして機能するものと期待した。 実際に、本手法の構築に向けヒト炭酸脱水酵素(hCA)を標的蛋白質として選択しプローブ設計・合成を行ったところ、種々の検討からhCAのみに蛍光オフオン型で応答するプローブの開発に成功した。また、異なる蛋白質においても本手法の適用が可能であることも併せて見出している。これらの結果については、現在論文投稿中である。
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