本研究の目的は、spring8において、逆コンプトン散乱によって得られる2GeV程度のγビームと核子の衝突によって生成されるメソンを測定することにより、量子色力学の理解を深めることである。 まず、原子核中の核子衝突によって生成されるω、η'メソンの原子核中の質量を測定することで、原子核内でのカイラル対称性の部分的回復によるωの質量変化の検証、かつU_A(1)アノーマリの有効的回復によるη'の質量変化を検証することを目指している。また、γビームはエキゾチックなメソンπ1(1400)(2クォーク状態と解釈し難いスピンパリティを持つメソン)を生成するのに適しており、γ+p衝突における生成断面積はπ1(1400)の内部構造を探るのに重要な情報である。これらの測定には、標的の回りに電磁カロリメーターを配置する必要がある。 今年度においては、測定に必要なγ検出器をspring8で運用する計画について目処をつける事に成功した。また、得られるであろう実験結果を解釈するために必要不可欠な原子核効果の評価を行うために、GIBUUとGEANTを元にしたシミュレーションの開発を進めている。 断面積測定を元にした、質量測定の方法の可能性を検討し、理論物理の専門家との議論を進めている。 また、参考データとして重要なだけでなく、スカラーメソンfO(1370)やfO(980)の測定を目的として、γ+p衝突をTPCと前方スペクトロメータの組み合わせで大きなアクセプタンスで測定したデータの解析を行っている。特に今年度においては、TPCでの飛跡、運動量決定、粒子識別の較正を行った。
|