本研究では、LEPSでのγビームによって原子核内でのカイラル対称性の部分的回復によるメソンの質量変化の検証実験を行い、かつU_A(1)アノーマリの有効的回復によるη'の質量変化を検証することを目的とする。Φ中間子の質量変化については、現在最大の論点はψNの断面積である。これを決定するために、γ+p衝突において、TPCと前方スペクトロメーターを用いて特に後方生成の断面積を決定する。 今年度においては、十倍のビーム強度と大アクセプタンス、優れた粒子識別能力と運動量決定精度を得るための、LEPSのアップグレード計画として、ビームラインの設計および、ブルックヘブン研究所のE949検出器の運搬作業、モンテカルロシミュレーションソフトの開発を行った。 一方、γ+p衝突実験において、TPCと前方スペクトロメーターを使って得られたデータ解析を行った。特にTPCにおける荷電粒子の運動量決定と粒子識別に対してデータ更正を行い、現在前方検出器で得られた結果と比較し無矛盾な結果を得る段階にまで至っている。このセットアップに対応したモンテカルロシミュレーションの構築も行い、実データと一致した結果を得られるソフトの開発に成功した。これらの成果を用いることによって、来年度においては、ψNの断面積、特にビーム後方においての値を決定することが期待される。
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