申請者は共同研究者が作成したEvil-IRES-green fluorescent protein(GFP)knock-in miceを用いてEvilの正常造血における発現パターンについて解析を行った。その結果、Evilは造血前駆/幹細胞分画である(Lin-Sca-1+c-kit+(LSK)分画)にて高発現であり、その発現は分化に伴い急激に消失することを明らかにした。さらにLSK分画内では、長期造血幹細胞分画と考えられている、Flk2^- CD34^-分画、CD48^- CD150^+分画、SP-tip分画でEvilが高発現であった。また発生期のAorta-gonado-mesonephros領域(胎生10.5日)、胎盤(胎生12.5日)、胎児肝(胎生14.5日)それぞれの造血幹細胞や、5FU投与後の活性化された造血幹細胞でもEvilが高発現であることを明らかとした。 これらの結果から、申請者はEvilが長期造血幹細胞を効率的にマークすることができるという仮説を立て、これを検証した。LSK分画内でGFP+細胞とGFP-細胞を比較した場合、GFP+細胞はより静止期の状態にあり、さらに高いコロニー形成能を示した。また競合的骨髄再構築実験にてGFP+細胞にのみ多系統における長期的骨髄再構築能が認められた。以上の結果から、Evilが長期造血幹細胞を効率的にマークすることができることが示された。したがって、Evil-IRES-GFP miceは長期造血幹細胞の研究に非常に有用であると考えられた。
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