申請者は昨年度に共同研究者が作成したEvil-IRES-green fluorescent protein (GFP) knock-in miceを用いてEvilの正常造血における発現パターンについて解析を行った。その結果、Evilは長期造血幹細胞分画であるに高発現であり、Evilが長期造血幹細胞を効率的にマークすることができることが示された。今年度はその結果からEvilが特に長期造血幹細胞の維持に重要であるのではないかと考え、Evilヘテロ欠損マウスを用いて造血前駆/幹細胞分画の機能解析を行った。その結果、Evilヘテロ欠損マウスでは他の分画と比較してFlk2^- CD34^- LSK、CD48^- CD150^+ LSKの長期造血幹細胞が著明に減少していた。さらにFlk2^- CD34^- LSKを細胞分離し機能解析を行ったところ、in vitroにおけるコロニー形成能、in vivoにおける骨髄再構築能ともに野生型マウスと比較して著明に低下していた。この結果よりEvilは長期造血幹細胞の維持により重要であることが示された。さらにEvilがどのように長期造血幹細胞の維持に寄与しているか明らかにすることを試みた。まず、長期造血幹細胞の維持に影響を与えることが知られている、細胞周期・アポトーシス・活性酸素についてEvilヘテロ欠損が影響するか評価したが、変化は認められなかった。Evilヘテロ欠損マウスの長期造血幹細胞がIn vitroの培養系にて造血幹細胞分画を維持できないことを考慮すると、Evilヘテロ欠損マウスでは細胞周期によらない自己複製能の低下(分化の促進)が起きている可能性が考えられた。以上の結果より白血病幹細胞において重要な役割を果たしているEvilの機能が明らかになったと考えられた。
|