研究概要 |
研究課題は、「移住女性が生きる重層的親密圏とそのポリティクス」である。本研究の目的は、在日フィリピン人女性が生きる重層的親密圏がどのように構築され、維持されているのか、そこにはいかなるポリティクスが働いているのかを明らかにすることである。これを通じ、家族や移民ネットワーク、支援NGOなど、従来別個に捉えられてきた親密圏を、差異と共通性をふまえ統一的に把握することができる。 本研究が対象とする在日フィリピン人女性の多くは、80年代以降に来日し、そこでの就労を経て、日本人との結婚や子どもの出産など、日本人と家族関係を形成してきた。彼女たちの日本への移動を、アジアにおける結婚移住という文脈で考察するため、平成22年8月より引き続き、平成23年4月1日~8月9日まで国立シンガポール大学アジア研究所で調査研究を行ってきた。具体的には、ジェンダーと移民およびアジアにおける移民研究についての文献研究に取り組むともに、アジア地域内の女性の移住労働者にかんする情報収集や、研究所での会議に積極的に参加し、国際的な研究ネットワーク構築にも力を入れた。またその間、在日フィリピン人女性支援NGOにおける親密圏の構築過程を分析した論文の修正を行い、『社会学評論』に掲載された。 帰国後は、主に在京の支援団体を訪問し会合に出席することを通じて、日本の移住者をめぐる状況の情報収集を行い、そのアップデートをはかった。またISA(国際社会学会)のResearch Committeeの一つであるRC06(家族研究委員会)主催セミナーCFR Kyoto Seminar 2011 on Reconstruction and Intimate and Public Spheres in a Global Perspective(Kyoto University,Sep.13,2011)において、"Relationship between Labor Force Participation and Marital Status of Female Migrants in Japan"と題した発表を行った。また日本社会学会の年次大会(関西大学,2011年9月17日)においても、「批判的移民理論のために-シティズンシップ・ジェンダー・境界」と題し、関連する発表を行った。その他、複数の国際セミナーに出席した。
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