研究課題
本研究の主目的は、マクロ経済の変動を抑制するための最適通貨バスケットウエイトを導出する事の出来る、バランスシート効果と多角的貿易を仮定した動学一般均衡モデルを構築する事で、「何に対して固定すべきか」という問いへの解の提示と、一般性を持つ「通貨バスケットの理論」そのものを完成させる事である。平成21年度は、まずバランスシート効果がマクロ経済に与える影響について理論的に検証する。具体的には、外貨建てでの資金調達しか行う事ができないという信用制約を抱えるNew Keynesian型小国開放経済の確率的動学一般均衡モデルを構築し、外国金利や交易条件といった外生的なショックを発生させ、通常の自国物価のみにターゲットを設定する場合と為替変動を考慮するターゲットルールの下、そのパフォーマンスを比較した。その結果、上記信用制約は外生的なショックを増幅する効果を持つが、このバランスシート効果には資産側から発生するチャネルと負債側から発生するチャネルが存在し、資産側の変動がマクロ経済変動に強く寄与する事が明らかとなった。また、生産者国側が為替変動を完全には価格に反映させない行動である市場別価格設定行動と通貨バスケットの構成比率についても分析を行った。市場別価格設定行動は貿易国により異なる事が知られており、これは単純に貿易量シェアを構成比率にしても貿易収支が安定化しない事を意味する。そこで、動学一般均衡モデルにこの市場別価格設定行動を行う輸出業者を仮定し、市場別価格設定行動の程度と貿易収支を最も安定化させる通貨バスケット構成比率の関係について検証を行った。その結果、市場別価格設定行動が弱い通貨に対して相対的に大きく比率を設定する事で変動を効率的に抑制可能である事が明らかとなった。上記の研究結果は従来の通貨バスケットの議論で理論的にその関係を明らかにされていなかったものであり、政策的示唆を持つものである。
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Review of Monetary and Financial Studies (近刊, 印刷中)