研究課題
本研究では、運動誘発盲によって視覚的アウェアネスが消失しているターゲットと、瞬間的なホワイトノイズの時空間的な呈示位置が完全に一致している場合には、消失した視覚的アウェアネスが再び生起するという現象を、通常の実験環境における比較的狭い範囲の視野のほかに、大視野においても生じることを実験的に確認した。この実験では、ホワイトノイズの呈示位置や呈示そのものがランダムに決められていたために、実験参加者は試行開始前にいずれの条件が呈示されるかを予期することはできない。それにもかかわらず、視聴覚刺激が同一の位置から呈示された場合には、そのほかの条件と比べて運動誘発盲の持続時間が短くなった。このことは、実験参加者の反応はホワイトノイズが鳴ると常にターゲットが再び現れたと反応することや(反応バイアス)、突然呈示されたホワイトノイズに対する驚愕反応ではないことを示す。次に、聴覚刺激の呈示による視覚的アウェアネスの回復までの潜時を検討した。その結果、ターゲットの消失にあわせて瞬間的にホワイトノイズが呈示されると、消失から0.4秒後には視覚的アウェアネスが回復し始めることを示した。このことは、ある感覚のアウェアネスが生起するためには、刺激が呈示されてからおよそ0.5秒の間持続した神経活動が必要であるという神経生理学的知見と符合する(Libet,2004)。これらの結果から、ターゲットに対する視覚的アウェアネスが消失しても、一定の空間範囲内で、反応バイアスなどによらない視聴覚間相互作用が生じ、視覚的アウェアネスを回復させることが明らかになった。この研究は基礎心理学会第28回大会で優秀発表賞を受賞した。
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Attention, Perception, and Psychophysics 72
ページ: 387-397
The Japanese Journal of Psychonomic Science (印刷中)