研究課題
本研究では、運動誘発盲によって視覚的アウェアネスが消失している視覚刺激(ターゲット)と、瞬間的な聴覚刺激(ホワイトノイズ)の時空間的な呈示位置が一致している場合には、消失した視覚的アウェアネスが再び生起するという現象を、通常の実験環境における比較的狭い範囲の視野のほかに、大視野においても生じることを実験的に確認した。この実験では、聴覚刺激の呈示位置や呈示そのものがランダムに決められていたために、実験参加者は試行開始前にいずれの条件が呈示されるかを予期することはできない。それにもかかわらず、視聴覚刺激が同一の位置から呈示された場合には、そのほかの条件と比べて視覚刺激の消失時間が短くなった。このことは、実験参加者の反応は聴覚刺激が提示されると常に視覚刺激が再び現れたと反応することや(反応バイアス)、突然呈示された聴覚刺激に対する驚愕反応ではないことを示す。次に、聴覚刺激の呈示による視覚的アウェアネスの回復までの潜時を検討した。その結果、視覚刺激の消失にあわせて瞬間的に聴覚刺激が呈示されると、消失から0.4秒後には視覚的アウェアネスが回復し始めることを示した。このような回復効果は、聴覚刺激の強度とともに促進されることが示された。これらの結果から、視覚刺激に対するアウェアネスが消失しても、一定の空間範囲内で、反応バイアスなどによらない視聴覚間相互作用が生じ、消失した視覚的アウェアネスを回復させることが明らかになった。この研究は基礎心理学会第28回大会で優秀発表賞を受賞した。
すべて 2010
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The Japanese Journal of Psychonomic Science
巻: 29 ページ: 85-86