本年度は以下の二点を中心に研究を行った。 (1)Rees代数の不変式環の強F正則性 Gを群、AをGが作用する可換環とし、IをGの作用で安定なイデアルとする。このときIのRees代数R(I)もまたG代数となる。Rees代数はブローアップ代数とも呼ばれる極めて重要な代数であるが、Rees代数の重要性に比してその不変式環はほとんど研究されておらず、申請者の研究の前には後藤四郎氏・居相真一郎氏による共同研究くらいしか知られていなかった。本年度はGが代数閉体上の簡約群、Aが有限次元G加群の対称代数、mがAの唯一の斉次極大イデアルの場合に、AがG加群として良いフィルター付けを持てば不変式環R(I)Gが強F正則となることを証明し、論文"Strong F-regularity of invariant subalgebras of Rees algebras"にまとめた. (2)2項式辺イデアルの準素分解と形式的冪 単純グラフGの2項式辺イデアルとは、Gの辺に対応するある2項式全体によって生成される多項式環のイデアルをいう。このイデアルは申請者とHerzog-日比et.al.によって独立に研究が始められた。本年度は2項式辺イデアルの被約グレブナー基底と準素分解を与えるアルゴリズムに関する論文"Graphs and ideals generated by some 2-minors"を執筆した。この論文はCommunications in Algebra誌に掲載が決定している。また特にGが完全2部グラフの場合に、2項式辺イデアルの素因子をすべて計算し、形式的冪と通常の冪が一致することを証明した。また特に星形グラフと呼ばれる完全2部グラフに対応する2項式辺イデアルはF純性を持つことを証明した。
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