研究課題/領域番号 |
09J05132
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
松原 和純 名古屋市立大学, 大学院・システム自然科学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | ヘビ / 性染色体 / 爬虫類 / 性決定 / 進化 |
研究概要 |
前年度までの研究成果として、FISH法によって29の遺伝子がZ染色体にマッピングされ、そのうち5つがW染色体にもマッピングされている。そして、W染色体にもマッピングされた5つの遺伝子のうちCTNNB1とWACについて10科のヘビ種においてZとWホモログの塩基配列を解読し、分子系統樹を作製した。今年度は、SEPT7について同様に系統解析を行った。その系統樹の分岐パターンから、SEPT7のZとWホモログ間の分化はヘビ亜目の系統分化の初期に起きたと推定された。3つの遺伝子の分岐パターンを比較した結果、ヘビにおけるZとW染色体間の分化は動原体領域から始まったと推定された。また、ヘビの進化過程において比較的短時間で性染色体間の分化領域が拡大したと推定された。哺乳類や鳥類では性染色体の分化は染色体の末端から始まり、段階的に分化領域が拡大したと推定されている。ヘビにおける分化過程はそれらと異なり、性染色体の進化について新たな知見をもたらすと思われる。現在、この成果について論文を執筆中である。 シマヘビの産卵後0日と4日の胚から生殖腺を摘出し、cDNAライブラリーを作製した。DMRT1、SOX、CYP19A、FOXL2などの性分化関連遺伝子の発現量をRT-PCRによって雌雄間で比較した結果、生殖腺の性分化は産卵後0日から4日の間に始まることが推定された。そこで、次世代シーケンサーを用いて産卵後4日杯の生殖腺におけるトランスクリプトーム解析を行い、発現遺伝子の種類やその発現量を雌雄間で比較した。ZとW染色体の両方に位置する遺伝子の一つであるCTNNB1が性分化初期の雌の生殖腺で強く発現していた。マウスにおいてこの遺伝子は未分化生殖腺が卵巣へ分化する際に必須であることが実験的に証明されている。これらのことから、現時点において、CTNNB1がヘビにおける性決定遺伝子の最有力候補と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的についてはおおむね達成したと考えられるが、予定した全ての実験項目について成果が得られたわけでは無い。具体的には、ZとW染色体が形態的には殆ど見分けがつかないニシキヘビにおいて、DNAレベルで分化している領域の同定を試みたが、達成できなかった。また、性決定の候補遺伝子についてin situ uhybridizationを行う予定であったが、それに至らずに研究期間が終了した。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、性決定の候補遺伝子についてin situ hybridizationを行い、発現時期や部位を正確に同定する必要がある。また、性決定の候補遺伝子としてあげたCTNNB1にはZホモログとWホモログが同定され、それらの間でいくつかのアミノ酸配列の置換が検出された。それらのアミノ酸置換がタンパク構造や機能にどの様な変化を及ぼすかバイオインフォマティクス的手法を用いて推定する。さらに転写開始領域やプロモーター領域などの遺伝子の上流領域を二つのホモログ間で比較する。最終的には、トランスジェニックやノックダウンなどを行い、候補遺伝子の発現パターンを変化させることで性転換が起こるかを調べる予定である。
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