2009年度においては、外国籍住民が集住する首都圏郊外・公営団地の事例研究によって得られた「集会所なるもの」の構造と論理に関する知見をより深化・発展させるべく、以下の研究・調査課題に取り組んだ。1.米国カリフォルニア州サンディエゴにおける移住者・難民集住地域を対象として、本格的な現地調査計画策定のためのプレ・サーベイを実施した。その成果としては(1)上記地域の歴史・地理・社会状況に関する基礎的な資料の収集、(2)移住者・難民支援を行う諸組織・団体に関する情報・資料の収集とリスト作成、(3)活動の参与観察および担い手へのインタビューによる一次データの収集、(4)カリフォルニア大学など現地研究機関へのコンタクトおよび研究動向の把握、である。これにより、上記地域における支援組織を軸としたアクティヴィズムの布置連関の見取り図作成が可能になるとともに、移住者やその子どもたちといった不安定な生活を強いられた人びとによる日常的実践や、多様な行為者のコミットメントによって生起する重層的な場所性をとらえるための、長期的な調査研究を行う基盤を固めることができた。2.2006年に実施された市民活動団体調査の継続研究として、「社会運動と空間」という視角にもとづく、調査票データの再分析、理論動向の把握、社会運動/市民活動の拠点空間に関する事例研究を行った。また、東京都内の個人加盟労働組合を事例として映像機器を用いたアクション・リサーチを行い、その過程で映像作品を共同制作した。こうした作業を通じて、「社会運動と空間」をめぐる争点を整理し、空間的な視角から首都圏におけるアクティヴィズムの諸位相を経験的に明らかにするための論点と素材を提供することが可能となった。
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