研究課題
2010年度(平成22年度)においては、越境移住者が集住する公営団地・集会所でのフィールド作業によって得られた「集会所なるもの」の構造と論理について、米国カリフォルニア州サンディエゴの移住者・難民集住地域調査および東京圏の市民活動団体に関する事例調査と空間分析を行い、グローバル化と新自由主義という文脈のもとで事例研究を積み重ねながら考察することによって、その分析視角と知見とを発展・深化させる作業に従事した。具体的には、米国当該地域で活動するNPOやNGOへの参与観察や聞き取りにもとづき、調査者自身の調査過程を対象化しつつ、団体・組織が活動を行う過程で構築される空間を記述・分析した。また、労働・生活基盤の不安定性にともなう「生きがたさ」の低減に取り組む首都圏の労働/生存組合について、複数の組合が拠点をかまえる空間の形成過程を団体のキーパーソンへの聞き取りをもとに明らかにした。そして、この拠点空間の形成過程で生じた担い手の経験と労働組合の「再発見」というダイナミズムの存在を指摘した。上記の作業は、現代社会における「かけこみ寺」や「居場所」といった空間・場所がもつ、多層的な構造や錯綜する複数の論理をとらえるとともに、現代都市社会における「生存」の問題群に対して、「社会運動と空間」という視角から照射した知見を提供するという意義をもっている。来たるべき「社会」生成の一端を担うアクティヴィズムの動態と集合性をとらえるにあたって、空間・場所という視角がもつ射程を明らかにした点に、本研究の重要性があったと考えている。
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KG/GP社会学批評
巻: 別冊 ページ: 175-186
都市空間と市民社会組織の編成に関する研究-首都圏市民活動調査から(日本学術振興会科学研究費・挑戦的萌芽研究報告書「評価国家の構造と動態「新しい介入主義」分析の構想」(平成21年度~22年度)(研究代表者・町村敬志))
ページ: 63-75