研究概要 |
ニワトリの網膜におけるPit-1発現細胞を同定するために0日齢の網膜においてin situ RT-PCR法を行った結果,網膜の全細胞でPit-1が検出された。孵卵6日,孵卵14日の網膜でも全細胞でPit-1が検出された。下垂体ホルモンの発現が報告されていない細胞種においてPit-1の発現が見られることから,網膜発生においてPit-1は下垂体ホルモンの発現と関連が低く,細胞増殖等の下垂体ホルモンの発現制御以外の役割をもつ可能性が示唆された。 ニワトリの下垂体外組織で発現する主要なアイソフォームPit-1wが鳥類以外の生物種で存在するか否かを調べるために,マウス,ラットの下垂体でPit-1wをクローニングし,従来鳥類特異的とされてきたPit-1wが哺乳類に存在することを明らかにした。ラットの下垂体腫瘍由来細胞株GH3においてPit-1wが発現することから,Pit-1wは成長ホルモンおよびプロラクチンの発現制御に関与すると考えられた。 マウスの下垂体外組織におけるPit-1の発現を調べることを目的とし,RT-PCR解析を行った結果,特に胸腺と精巣においてPit-1の強い発現が見られた。発現するPit-1アイソフォームの種類を調べたところ,胸腺では下垂体での主要なPit-1であるPit-1α,精巣ではPit-1wが主に発現していた。精巣の発達段階を追ってPit-1 mRNAの発現を調べたところ,3週齢以降に強い発現が見られた。免疫染色法により精巣におけるPit-1発現細胞を調べたところ,3,4週齢では精母細胞,精子が観察される6週齢以降では精子のみで陽性シグナルが見られた。これらのことからPit-1は精巣の発達および精子形成に関与すると考えられた。さらにニワトリの精巣でもPit-1wが発現しており,Pit-1の精巣における機能は生物種間で保存されている可能性が示唆された。
|