研究概要 |
当初の予定通り、マウス脂肪組織でのHoxc8,miR-196aの発現解析を進めることができた。つまり、脂肪組織でのHoxc8,CD34,CD68の免疫染色、幹細胞が濃縮されるSVFフラクションとそれ以外のフラクションでのHoxc8,HMGA2などの発現の比較を行った。 また、脂肪特異的なmiR-196a発現マウスが樹立できた。このマウスは高脂肪食負荷の条件においても肥満に対して抵抗性を示し、miR-196aが個体の肥満を抑制する可能性が示唆され、非常に興味深い結果であった。マウスの生理学的解析として、ブドウ糖負荷試験、インスリン負荷試験、血清インスリン濃度測定、血清アディポネクティン濃度測定を行い、同マウスが糖尿病の前病態であるインスリン抵抗性になりにくいことが示された。さらに、代謝ケージを用い、個体レベルの代謝機能を検討中である。さらに、日内運動量に差が見られないかどうかも検討中である。 さらに、転写因子であるHoxc8の直接的な標的遺伝子の解析についても行っており、既に、脂肪分化にかかわる重要な遺伝子の制御にかかわっていることを示唆する結果を得ている。この点に関してはさらに詳細な解析を施行しており、どうして肥満に対して抑制的な効果を示すのか、分子メカニズムに迫るべく検討を行っている。 治療目的で、レンチウイルスベクターを用いてmiR-196aを脂肪組織幹細胞に導入する試みについても進行中で、既にウイルスベクターを用いた初代培養細胞への遺伝子導入に成功している。今後は、同細胞や、脂肪特異的miR-196a発現マウスの脂肪組織を、肥満マウスに移植し、治療効果が認められるかどうか検討する予定である。
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