Hippo経路は器官のサイズコントロールや癌化に関わるシグナル伝達経路として新たに発見されたが、他のシグナル伝達経路とのクロストーク等についてはほとんど解明されていない。これまで私が見出した結果やそのシグナル伝達経路が関わる生理現象の相関から私はMAPキナーゼファミリー分子の一つであるERK7とHippo経路のクロストークの可能性に特に着目し、検討を行っている。本年度、私はモルフォリノオリゴヌクレオチドを用いてxERK7のノックダウン実験を行った。xERK7を背側領域においてノックダウンしたところ、頭部構造が減少し、背側へ屈曲する発生異常が見られた。さらに、より高濃度のxERK7 MOを背側にインジェクションした胚では、頭部構造の欠損や背側への屈曲に加え、胸部の膨張が観察された。一方xERK7を腹側領域においてノックダウンしたところ、尾芽の形成不全や背びれの欠損といった表現型が見られた。より高濃度のxERK7 MOを腹側にインジェクションした胚では、ひれや尾芽の欠損、さらに前後軸伸長の抑制が観察された。また、これらの胚では尾芽胚期から腹部の崩壊が観察された。これらの結果からERK7がアフリカツメガエル初期胚の発生において必須の因子であることが示された。 さらにホールマウントin situハイブリダイゼーションを行い、より詳細にxERK7の発現領域を調べたところ、xERK7が神経胚期の表皮領域においてciliated cells特異的に発現していることがわかった。これはxERK7のin situハイブリダイゼーションとcilia markerであるalpha-tublinの抗体染色を合わせて行うことにより確認できた。CiliogenesisはHippo経路の上流因子が関わっているPCP経路と相関があることが知られており、この結果は非常に興味深い。
|