研究概要 |
タンパク質をコードしないnon-coding RNAが適切に生理機能を発揮して細胞機能を発現するためには,non-coding RNAの分解制御が極めて重要な役割を果たすものと考えられる。そこで本研究では,哺乳動物細胞の細胞核中のスペックル構造体に局在する約8kbのnon-coding RNAであるmetastasis associated lung adenocarcinoma transcript 1(MALAT-1)に着目し,核内でのMALAT-1の分解を調べることで,核内non-coding RNAの特異的分解制御機構の解明を試みた。 まず,5種類のヒト由来ガン細胞株を用いて,RNA polymerasell転写阻害剤であるDRBを細胞培養液に添加し,細胞内でのRNAの転写反応を阻害させた後,経時的に細胞を回収し,細胞からtotal RNAを抽出して,Northern blot法によりMALAT-1量を測定した。その結果,紬胞株間によってMALAT-1分解速度はそれぞれ異なり,半減期が約9時間のものから12時間以上のものまで存在することを見出した。 次に,MALAT-1の分解に関与する因子を特定すべく,いくつかの核内RNA分解関連因子をsiRNAによりノックダウンし,MALAT-1分解速度に影響がみられるかどうかを調べた。核内RNA分解関連因子として,Xrn2,PM/Scl-75,PM/Scl-100,PARN,Mtr4をノックダウンし,DRBを添加後,経時的に細胞を回収し,細胞からtotal RNAを抽出して,Northern blot法もしくはReal-time PCR法によりMALAT-1量を測定した。その結果,これらの因子をノックダウンしても,MALAT-1の分解速度に影響はみられなかった。よって,これらのRNA分解関連因子は,MALAT-1の分解には影響しない,もしくは,単独のノックダウンではMALAT-1の分解速度には影響がみられない可能性があると考えられる。
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