通常熱的に不安定なアリル銅種がカルベン配位子により安定化されるという知見をもとに、カルベン配位子を有する銅錯体によるホモアリルアルコールのレトロアリル化およびそれを利用したカルボニル化合物のアリル化反応を見出した。本触媒系ではこれまで適用できなかった第二級ホモアリルアルコールも基質として用いることができる点で有用である。さらに本反応はホモアリルアルコールのγ付加体からα付加体への異性化反応にも応用することができる。 次に上述した知見をもとにホモアレニルアルコールのレトロアレニル化を利用したイミンの選択的アレニル化について検討した。アレニル金属種とプロパルギル金属種は通常平衡状態にある。そのためカルボニル化合物との反応では二種類の生成物、つまりホモプロパルギルアルコールとアレニックアルコールが生成してしまうという問題がある。特筆すべきことに本触媒系では高い選択性でイミンがアレニル化された生成物が得られた。なお未精製の生成物をエタノール/水混合溶媒中加熱することにより3-ピロリンが高収率で得られた。3-ピロリンは天然物に見られる構造であり、酸化剤により容易に酸化されピロールへと変換できる。これらの結果をもとにホモプロパルギルアルコールのレトロプロパルギル化を利用したイミンの選択的プロパルギル化についても検討を行なった。その結果プロパルギル位に置換基を有するホモプロパルギルアルコールを用いると、イミンが選択的にプロパルギル化された生成物のみがほぼ定量的に得られた。
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