研究課題/領域番号 |
09J05309
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
崔 允寛 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | アレン / クロロアミノ化 / 銀触媒 / リチウム / アレノール / ベンゾフルベン / 銅触媒 / 共役エンイン |
研究概要 |
(1)アルケンに対する分子内ハロアミノ化反応は、ハロゲンを有する含窒素環化合物が得られるため近年盛んに研究されている。しかしながらアルケンの代わりにアレンやアルキンを基質とした例はほとんど報告されていない。そこで1,10-フェナントロリンを配位子とする銀触媒を用いて、N-クロロスクシンイミドを塩素化剤とする官能基許容性に優れたアレンの分子内クロロアミノ化反応を達成した。また本反応により得られる生成物はクロスカップリングや酸化反応により種々のピロリンやピロール誘導体へと容易に変換することが可能である。 (2)アルカリ金属は豊富に存在するため安価であり、また毒性が低いため有用である。しかしながらアルカリ金属をルイス酸として用いる反応はこれまであまり研究されていない。そこでアルカリ金属であるリチウムのルイス酸性に関する研究を行なった。その結果、リチウム塩のルイス酸性が対アニオンにより大きく変化することが分かった。ヘキサフルオロリン酸リチウム存在下、1-アリールー2,3-ブタジエン-1-オール誘導体をヘキサン中加熱撹拝すると、アルコール部位の活性化を経てナザロフ型環化が進行することを見いだした。なお本反応は臭化リチウムやトリフルオロメタンスルホン酸リチウムなどを用いた場合ほとんど進行しない。生成物であるベンゾフルベンは材料化学や配位子の前駆体として重要な化合物である。また他のヘキサフルオロリン酸塩を用いても本反応はほとんど進行しなかった。またこの反応においてリチウム塩の代わりに銅塩を触媒として用いてトルエン中反応させると、アレン部位のプロトンが選択的に引き抜かれることにより共役エンインが立体選択的に生成することも見いだした。本手法は共役ジエンインやエンジインの立体選択的合成にも利用することが可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ソフトなルイス酸である銀触媒の研究からはじまり、これまであまり効果的には利用されていなかったアルカリ金属のルイス酸としての有用性を示すことができた。また同じ基質を用いてルイス酸により異なる生成物作り分けが可能であることも報告できた。
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今後の研究の推進方策 |
α-アレノールをリチウム塩と反応させることによりベンゾフルベンを、銅触媒を作用させることにより共役エンインをそれぞれ合成した。今後はこのアレンの末端プロトンの引き抜きを利用したこの反応形式を更に発展させていきたい。具体的には基質のアルコール部位の位置をずらす、つまりβ-アレノールを用いて銅触媒と反応させることによりシクロブロパン環の合成を目指す。
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