核酸による免疫応答は、ウィルスや細菌などの病原体に対する生体防御において重要である。自然免疫系では、RNAおよびDNA認識受容体が病原体由来の核酸を感知し、インターフェロンをはじめとするサイトカイン産生による抗ウィルス応答や獲得免疫系発動などの生体防御応答を惹起する。RNA認識受容体は、膜型のTLR3/7/8、細胞質内のRIG-I/MDA5が同定されており、DNA認識受容体は膜型のTLR9、細胞質内のDAI/AIM2が同定されているが、未知の細胞質内DNA認識受容体の存在も示唆されている。 今回の研究では、未知のDNA認識受容体をスクリーニングした結果、HMGBタンパク質(HMGB1/2/3)が候補分子として得られ、実際にDNAによる免疫応答に重要であることが示された。また、HMGBはDNAのみならずRNAによる免疫応答にも関与することが分かった。更に解析した結果、HMGBは病原体由来の核酸を広く認識できる万能な核酸センサーであることが示され、HMGBが始めに核酸を認識した後に、個々のRNA、DNA認識受容体が各々のリガンド特異的な免疫応答を引き起こしているにとが示唆された。HMGBをターゲットした薬剤を用いることで、SLEなどの核酸を媒介する自己免疫疾患の治療が期待できる。 また、RNA認識受容体として知られるRIG-I/MDA5が、DNA認識受容体としても機能することが示され、更に未知のDNA認識経路が存在することが明らかとなった。 以上の研究成果は、論文としてNature誌およびPNAS誌に、学会では分子生物学会で発表した。
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