核酸は、細菌やウィルス感染における強力な免疫応答誘導因子であり、病原体特有の分子パターンの一つであると考えられている。自然免疫系では、RNAおよびDNA認識受容体が病原体由来の核酸を感知し、インターフェロンをはじめとするサイトカイン産生による抗ウィルス応答や獲得免疫系の発動などの生体防御応答を惹起する。前年度において、High mobility group box (HMGB)と呼ばれる分子群(HMGB1~3)が核酸による免疫応答に重要であり、病原体由来の核酸を広く認識できる万能な核酸センサーであることを見出し、論文としてNature誌に発表した。 当該年度において、上述の研究成果を分子生物学会で口頭およびポスターで発表した。 実施した研究は、従前の研究でDNAセンサーとして発見されたDAI遺伝子について、ノックアウトマウスを用いて解析を行った。DAI遺伝子欠損マウスから各種免疫担当細胞を調製し、DNA刺激におけるサイトカイン誘導を検討した結果、DAI欠損細胞による免疫応答に有意な差は得られなかった。DNA認識受容体は複数存在し、相補的に機能している可能性が示唆される。 また、従前の研究でDNAセンサーとしても機能することが線維芽細胞で示された、RNA認識受容体であるRIG-Iのノックアウトマウスから樹状細胞などを調製し、DNA刺激におけるサイトカイン誘導を検討した結果、RIG-I欠損細胞において顕著に減弱した。このことから、免疫担当細胞においても、RIG-IはDNAによる免疫応答に重要であることが示された。 これらの結果から、DAIやRIG-IなどのDNA認識受容体による免疫応答は、細胞種によって異なっていることが示唆され、そのメカニズムを明らかにすることで核酸が関与する自己免疫疾患などの原因の解明につながることが期待できる。
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