研究課題
本申請内容において、申請者はCXCR4リガンドとインテグリンα_vβ_3リガンドのハイブリッド分子の創製を提案した。しかしながら、ハイブリッド分子の合成は困難であるため、まず申請者は癌細胞表面に過剰発現しているCXCR4二量体を標的としたホモ二価結合型リガンドを創製し、それらを用いて実際に二価型リガンドが受容体の発現数に応じた細胞の認識するのかどうかを検討した。CXCR4を含む多くのGPCRは構造が明らかでないため、二量体構造に対して適切なリガンド間の距離を保つ二価結合型リガンドの理論的な構築は困難であった。そこで、CXCR4結合リガンドである環状ペンタペプチド(FC131)を堅固な構造を有するポリプロリンリンカーで架橋した二価結合型FC131誘導体を設計・合成した。ポリプロリンリンカーの長さは一定に保たれているため、適切なリガンド間距離の場合に結合親和性の増大がみられると考えられた。CXCR4結合活性を評価した結果、リガンド間距離が5.5-6.5nmの場合に二価型結合形成による相乗的な結合活性の上昇が見られた。この結果に基づき、高い結合活性が得られた二価型リガンドを用いて細胞上のCXCR4に対する認識活性を評価した。これらの結果より、二価結合型リガンドのCXCR4高発現細胞に対する認識活性の高さが示された。さらに、フローサイトメトリーを用いた解析から、二価結合型リガンドは天然の状態でCXCR4を高発現している白血病細胞由来のJurkat細胞においても高い認識能を示すことが明らかとなった。本研究成果は、二価型リガンドががん細胞特異的な作用を示すがん転移抑制剤となりうることを示唆しており、今後の創薬研究において非常に有用な知見を示すものである。
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