光子数識別器は、n光子状態を測定する際、n光子状態を測定できる確率が検出効率のn乗に比例する。そのため、光子数の多い多光子状態を測定するためには、100%に近い検出効率が必要である。これまでに、80%を超える検出効率は実現していたものの、検出器と光ファイバの結合効率が85%程度であったため、95%を超える検出効率が実現できていなかった。今年度は、検出器の大きさを光ファイバのMFD以上にすることで、結合効率の向上を行なった。その結果、検出効率を98.4%まで向上させることに成功した。この検出効率は、光子検出器としては世界最高である。また、本検出器の高検出効率を利用した量子最適受信機や光子数識別能力を利用した非ガウス状態の生成実験などを成功させた。 単一光子検出器は、量子暗号通信などの実用化に向けて、高時間分解能や高計数率が求められている。今年度は、Nb表面の酸化を防止するAlOx/Nb構造を開発した。本構造は、従来のNb薄膜に比べ、極薄膜化が可能になり、転位温度、臨界電流密度、抵抗率などの向上にも成功した。M薄膜を用いた超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)では、単一光子検出のカットオフ波長が550nmであったため、1550nmの単一光子を検出することが出来なかった。それに対して、AlOx/Nbを用いたSNSPDは、同一転位温度において、膜厚を1/2、抵抗率を2倍にすることに成功したため、カットオフ波長を4倍以上にすることが出来き、1550nmの単一光子を検出することに成功した。
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