研究概要 |
Runx1は急性骨髄性白血病の染色体転座に高頻度に関わっており、Runx1欠損マウスは胎生12,5日で造血できずに死亡する。Runx1欠損マウスは軟骨細胞分化がおこる前に死亡するため、Runx1が軟骨細胞分化に果たす役割を今までの方法では解明することができなかった。われわれは、軟骨組織でのみRunx1を欠損し生存可能なマウスを独自に作製した。このマウスを用いRunx1の軟骨細胞分化における作用を世界で初めて明らかにした。さらに、Runx1、Runx2二重欠損マウスを得たところ、Runx1、Runx2二重欠損マウスは胸骨が消失するという驚くべき結果を見出した。このことから、Runx1が胸骨の発生に必須であることを明らかにした。 また、2種類の時期特異的な欠損マウスを用いることにより、Runx1は、間葉形細胞の軟骨細胞への分化を調節し軟骨細胞分化開始後には重要ではないことをつきとめた。そして、組織学的検討および分子生物学的検討により、間葉系細胞の凝集後の軟骨細胞分化においてSox5、Sox6の発現を調節することを示し、in vitroの検討により、Sox6が、Runx1とRunx2の軟骨細胞分化制御における標的遺伝子であることを示した。 一連の実験結果から、Runx1は、Sox5,Sox6の発現を介しRunx2と協調して間葉系細胞から軟骨細胞への分化を調節することを解明した(Development誌,2010年)。
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