研究課題
現実に遭遇する意思決定問題の多くは、決定という行為が一度で完了せず、一度とった決定の結果から生じる状況の変化に応じて何度も決定を下すという多段階の決定問題に帰着されることが多い。この種の問題を効率よく解決する手法が動的計画法である。その応用は多岐にわたり経済学においてはマクロ経済動学の解析において必須のツールとなりつつあるが、比較的に扱いが容易な確定的・確率的状態推移の下での加法型評価に限定されている。本研究は既存の状態推移を特殊なケースとして含むより一般的な非決定性動的計画法について検討し、数理経済学に応用することを目指している。本年度は、1.非決定性動的計画の連続モデルの最適方程式である制御積分方程式に関する一般理論の検討のため、土台となる個々の制御積分方程式とその解のコレクションを行った。2.非決定性動的計画においても連続モデルだけでなく離散モデルと多様な評価系の重要性を認識した。そこで、藤田敏治准教授(九州工業大学)・植野貴之准教授(長崎県立大学)と共に、確率基準の新たな(通常の動的計画法が適用できない)非加法型評価について研究し、(1)将来の各期に得られる利得が期の進行とともに単調に増加する確率を最大化する「成長型評価」(2)将来のどの期に対してもそれまでに得られた利得の集積値が所与の区間に収まる確率を最大化する「非終端型閾値確率評価」を導入し、最適再帰式と最適政策を導出した。(2)では「会社が短期的な資金不足を金融市場で調達できるか否かが不確実な状況下で黒字倒産をしない確率を最大にする経営計画を求めよ」という問題を表現したものである。さらに、3.「非終端型閾値制約をもつ非決定性動的計画問題」へと拡張した。すなわち、「どの期においても損失を碓実にカバーできる範囲で会社の利益を最大にするような経営計画を求めよ」という問題を非決定性動的計画問題で表現し、その解法を与えた。
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京都大学数理解析研究所講究録 (in press)
Mathematical Economics, RIMS Kokyuroku 1654
ページ: 19-34
経済学研究(九州大学経済学会) 76巻 第2・3合併号
ページ: 1-22