研究概要 |
1.研究の目的とその意義 本研究は、日系多国籍企業(日系MNE)による経営現地化の遅れについて(Kopp,1994;吉原,1996;白木,2006)、現時点での現状とパフォーマンスとの関係を検討し、日系MNEにとっての適切な現地化の程度を探るものである。本研究では、在外拠点のパフォーマンスを人的資源の獲得・定着とそのアウトカムとしての財務的パフォーマンスの2つによって多面的に測定した。結果(1)日系MNEの現地化レベルは進展させる余地がある、(2)経営システムはグローバルに標準化しながらも、拠点の自律性や現地の文化慣習への適応といった組織面での現地化が重要である、(3)ローカルスタッフが所属拠点や所属企業に対して組織的なアイデンティティを持つことが重要であることが明らかになった。また、これらの要因は人的資源の獲得・定着と財務的パフォーマンスに対して異なる効果を持つことも明らかになった。本研究の結果は、日系MNEに対して注意深い現地化プロセスの必要性、経営の現地化をパフォーマンスにつなげていく組織的仕組みの必要性を提示している。 2.研究の具体的な内容 主に在外拠点の現地化の程度(Chakravarthy and Permutter,1985;渡辺,1997)、組織内部の特徴を示す組織アイデンティティ(Albert and Whetten,1985)を重要な視点とし、これらの質問紙調査を日系MNEの在外拠点(84拠点)に対して行った。また追加的に日系MNEの在外拠点(4拠点)に対しフィールドワークを行い、単純なモデルから推し量ることができない経営課題を多面的に調査した。
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