研究概要 |
走査型プローブ顕微鏡技術(SPM)の一つである周波数変調(FM)検出方式ダイナミックモード原子間力顕微鏡(FM-AFM)は原子・分子分解能観察が可能であり、表面構造だけでなく様々な表面物性の測定が可能であることが知られおり、近年非常に注目されている技術である。FM-AFMでは、カンチレバー探針の振動振幅を相互作用力の減衰距離程度とすることで力検出感度を高めることができる。そのため、短距離相互作用を検出するには、1nm程度もしくはそれ以下に設定することが望ましい。しかしながら、ばね定数や振動振幅が十分に大きくなければ、探針先端が試料表面に吸着してしまう。さらに、散逸的相互作用が大きい系では、カンチレバーの自励発振が不安定化してしまう。本研究では分子系試料などの散逸的相互作用が大きい系においても自励発振を安定に保った状態でFM-AFMを行うため、振幅制御の帯域とその制限要素について検討した。 本研究において、超高真空中で自励発振しているカンチレバー(共振周波数:295.959kHz、Q値:28,000)に外乱を与え、振幅を強制的に変化させたときの制御回路の制御出力の周波数特性を回路パラメータが異なる二つの制御回路を用いて測定を行った。その結果、回路パラメータを適切に設定することで応答帯域を20Hz程度から3kHz程度まで広げることが可能だが、カンチレバーホルダのスプリアス共振ピークの影響により帯域が制限されることが分かった。さらにそれぞれの制御回路を用いて鉛フタロシアニン薄膜上で取得した周波数シフトカーブの測定を行った。制御回路のパラメータが適切でない場合振幅が一定に保てず取得した周波数シフトカーブが不正確となることが分かった。
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