研究概要 |
本年度は,メタンハイドレートの生成に重要な界面現象の分子動力学シミュレーションを実施した.具体的には,水/メタン系の界面を特徴付ける物理量をグラフィックカードを用いて大規模に計算し解析することを行った.メタンハイドレートは水と気体のメタンが接する界面で成長するため,水の気液平衡物性および水/メタンの気液平衡物性を調査した.その結果,これまでに開発されて来た分子パラメータの中で最も気液平衡物性の実験値の再現性の良いものを見出し,また,表面張力の実験値を最も再現出来る新たなパラメータを提案することができた.この結果は雑誌Journal of Chemical Physicsにて出版された.水/メタン界面においては,界面の物理量の温度/圧力依存性を明らかにし,またメタンの水への溶解度が水/メタン界面の物理量に大きく関係していることを見出した.この結果も雑誌Journal of Chemical Physicsに受理された.分子動力学シミュレーションの高速化そのものも,今後のメタン/水/ネオヘキサン界面のシミュレーションに不可欠であるため,グラフィックカードと呼ばれる性能当りのコストが最も安いゲーム機用の計算機を用いた高速化手法の開発に取り組んだ.安価なグラフィックカードは高精度の演算器を持たないため,低精度の演算器を組み合わせて高速に高精度のシミュレーションを行う方法を開発した.この結果は雑誌International Journal of Computational Methodsに受理された.また,実際に分子動力学シミュレーションのベンチマークテストに使われる系をグラフィックカードを用いてシミュレーションし,高速化率と数値誤差の評価を行った.この結果は雑誌Bulletin of the Korean Chemical Societyに出版された.
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