研究概要 |
本年度は骨細胞特異的ERα欠損マウスと骨細胞特異的AR欠損マウスを作出し、その骨解析を行なった。これらのマウスは全身性欠損マウスとは異なり、対照群と同様の体重を示した。また、骨芽細胞、破骨細胞ではERα(もしくはAR)の欠損を認めず、骨細胞のみで欠損が認められることを確認した。 まず、骨細胞特異的ERα欠損マウス(Dmp1-ERαKO)の骨密度をDXA法により測定したところ、脛骨近位部で有意な骨量減少を示した。さらにその骨量減少が骨形成・骨吸収いずれの異常に起因するかを明らかにするため骨形態計測を行なったところ、Dmp1-ERαKOでは対照群と比較して、骨形成パラメータ(骨芽細胞数、骨芽細胞面、骨形成率)の有意な低下を認めた。このことから、通常の重力環境下でも骨細胞のERαが骨形成を正に制御する機能を発揮していることが示唆された。現在、骨細胞が骨細管を通じて骨芽細胞へ骨形成を正に制御するシグナルを伝達している可能性を考え、それを証明するために、Dmp1-ERαKOと対照群からFACSにより骨細胞を単離し、マイクロアレイにより骨芽細胞増殖作用を持つ遺伝子の探索を試みているところである。一方で、骨細胞特異的なAR欠損マウスも有意な骨密度減少を呈した。現在その骨量減少が骨形成・骨吸収いずれの異常に起因するかを骨形態計測により明らかにしている。手法的な面では、本年度はコラゲナーゼ処理による簡易的な骨細胞単離法に加え、Dmp1-GFPマウスをDr.David W-Roweのラボ(University of Connecticut,USA)から供与いただき、そのマウスとDmp1-ERαKO(Dmp1-ARKO)を交配することで、FACSにより骨細胞を単離する方法を開始した。これに成功すれば、骨細胞におけるERαの標的遺伝子を明らかにすることが出来ると考えている。 これまで骨細胞のERαが荷重下における骨形成に寄与していることは報告されてきたが、本年度の研究により通常の重力環境下においても骨細胞におけるERα、ARが骨量維持に寄与していることを新たに提唱することができた。
|