イネの環境ストレス耐性に関わるRSS1の分子機能を明らかにするため、RSS1の機能やタンパク質安定性に関わるドメインの探索を行った。その結果、RSS1の耐塩性機能において、進化的に保存されたアミノ末端側58アミノ酸の不要と、カルボキシル末端側の酸性アミノ酸に富んだ領域の重要性が明らかとなった。また、アミノ末端側104アミノ酸に不安定性を決める領域があることが明らかとなった。そのアミノ酸配列中には、Destruction box (D-box)のコンセンサス配列の存在が判明した。D-boxを持つタンパク質は、細胞周期依存的にAnaphase promoting complex (APC)によりユビキチン化され、26Sプロテアソームにより分解されることが知られる。更なる解析にぶり、RSS1はD-box依存的に26Sプロテアソームにより分解されることが明らかとなった。 RSS1が細胞分裂に密接に関わると考えられたため、イネ培養細胞の形質転換系、及び同調培養系を構築し、RSS1の細胞周期依存性を調べたところ、RSS1は核相が4Cの細胞の割合の変化と同様に変動していることが明らかとなった。また、rss1変異体を用いた核相解析や根端組織の観察から、RSS1が塩ストレス条件での細胞分裂を維持することが明らかとなった。 今年度の研究により、環境ストレス耐性遺伝子として単離されたRSS1が、細胞分裂に関わる機能を持つことを具体的に示すデータが得られた。今後は、ストレス存在下での細胞分裂制御機構におけるRSS1の役割に焦点を絞った研究を行い、これまで別々に考えられてきた環境ストレス耐性機構と細胞分裂機構を統御するメカニズムにアプローチしていく。
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