研究課題
これまでの研究より、イネのRSS1は環境ストレス条件で細胞分裂周期のG1期からS期への移行を維持するのに必要な因子と考えられていたが、その分子機能については不明であった。RSS1の機能を理解する手がかりを得るため、酵母ツーハイプリッド法を用いた相互作用因子の探索を行ったところ、候補因子としてprotein phosphatase 1 (PP1)が同定された。植物体内での相互作用を確認するため、タマネギ表皮細胞を用いBiomolecular fluorescence complementation実験を行ったところ、RSS1とPP1の相互作用がみられた。PP1は真核生物で高度に保存されており、イネのPP1(OsPP1)において、金属イオンやリン酸と相互作用するアミノ酸の保存性が確認された。このことから、OsPP1は他の生物が持つPP1の活性を有すると予想された。さらに興味深いことに、OsPP1にはRetinoblastoma (Rb)タンパク質と相互作用する配列も保存されていた。RbはCyclin-dependent protein kinaseによってリン酸化されるとS期の進行を促し、PP1によって脱リン酸化されるとG1期で停滞させる働きを持つことが動物でよく調べられている。イネのRbのアミノ酸配列を調べるとPP1との相互作用に必要なRVxFモチーフが存在した。これらの結果や情報からRSS1はPP1との相互作用を介してRbのリン酸化状態を制御しG1期からS期への進行を調節しているという新しいモデルが考えられた。このように、今年度行った相互作用因子の探索と同定によってRSS1の機能解明への道筋が見えてきたことはとても大きな進展と思われる。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Nature Communications
巻: (未定 掲載確定)