研究課題
塩や低温、高温等の環境ストレスに対する耐性に必要なイネのRSS1遺伝子は新奇タンパク質をコードすることから、RSS1の機能解析によってストレス耐性に関わる新しいメカニズムの解明が期待されている。これまでに、(1)RSS1は細胞分裂の盛んな組織で発現し細胞周期依存性が認められること、(II)RSS1タンパク質も細胞分裂周期で制御されること、(III)RSS1は塩ストレス条件下で細胞分裂活性の維持に寄与し、分裂組織の細胞数を保持させる役割を持つこと、(IV)RSS1は動物において細胞分裂のG1-S期を負に制御するPP1のホモログ(OsPP1)と相互作用することが明らかになった。今年度は、環境ストレス存在下でRSS1が細胞分裂を制御する仕組みに迫るため、RSS1とOsPP1との関係性を明らかにすることを目的とし、研究を行った。イネには5つのPP1ホモログが存在するが、そのうち4遺伝子は栄養成長時の組織で発現する。酵母ツーハイブリッドシステムを用いて、RSS1とその4種のOsPP1との相互作用を調べたところ、RSS1はそのすべてのOsPP1と相互作用を示した。このことから、RSS1は複数のOsPP1の制御に寄与する可能性が示唆された。RSS1がOsPP1の活性にどのような影響を与えるのかについて調べるため、in vitroでの実験を検討した。初めに、大腸菌で発現させたRSS1とOsPP1の精製を行い、そしてその二つのタンパク質が相互作用することを免疫沈降実験法により確認した。相互作用が見られた複数の条件下で、OsPP1のタンパク質脱リン酸化活性に対するRSS1の影響を調べたが、大きな影響は見られなかった。PP1の阻害活性を持つInhibitor-2は、OsPP1に対し強い阻害効果を示したことから、RSS1はI-2とは異なるタンパク質特性を持つものと考えられるが、その詳細については今後の研究の進展が待たれるところである。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Nature Communications
巻: 278 ページ: 2
10.1038/ncomms1279