研究概要 |
1)東シベリア・タイガ林林床土壌微生物群集の培養モデルを構築するため,現地土壌の有機物層,ならびに無機質土壌層の土壌微生物群集から極低窒素濃度の平板培地を用いて計172株の細菌を分離し,計12株の窒素固定細菌および窒素固定補助細菌を選抜した.2)東シベリア・タイガ林では暑いマット状の有機物層が形成されるが,この特殊な有機物層の含水メタノール抽出物を解析したところ,乾燥重量の3.5%程度のマンニトールが含まれることが明らかとなった.下層無機質土壌の微生物群集がマンニトールを炭素源とする培地中で高い窒素固定活性を発揮することから,マンニトールが土壌中の窒素固定細菌の重要な炭素源となることが示唆される.有機物層にマンニトールが蓄積する仕組みが明らかとなっていないため,食用キノコに大量のマンニトールが含まれること(最大で乾燥重量の28.8%程度)に注目し,有機物層中の糸状菌がマンニトールの供給源であること仮説とするサンプリングを行った.すなわち,8月中旬に菌糸の発達度合によって区別した有機物層のサンプリングを行い,これらの水抽出物を日本に持ち帰った.3)ジェランガム-ソフトゲル法による窒素固定能の検出では培養によるバイアスが考えられるため,培養物と現地土壌の微生物叢の比較を試みた.東シベリアタイガ林にて,植生の類似した2つの森林で土壌を採取し,そみ場で土壌DNAの抽出を行った.これまでに,この土壌DNAを鋳型とした16S rRNA遺伝子領域および窒素固定に関わる遺伝子領域(nifH)の増幅に成功しており,さらに変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE法)による分析に着手した. このように,窒素固定細菌と補助細菌,有機物層と土壌微生物の関係が窒素固定の制限要因となる可能性を見出し,フィールド調査でこれらの裏付けとなる実験にむけたサンプリングを行った.
|